今年の建築旅行へぜひ持って行きたい、建築ガイドブックのガイド(海外編)




建築旅行。いい響きですね。何時間もかけて電車やバスを乗り継ぎ、有名な観光スポットには目もくれず、裏通りを歩いた先にあるのはたった一つの建物。でもそれがいい。新年も始まり、ことしもいろんな建築を見に行こう!と意気込んでいる方も多いのではないでしょうか。私もすっかり気分はGWや夏休みに向かっています(笑)。

さて今回は今手に入る建築ガイドブックをレビュー。まずは海外編から。ガイドブックとしての使いやすさを「大きさ」「重さ」「網羅性」「深さ」の4つの尺度から独断した採点付きです。

1.世界の建築街並みガイド シリーズ
大きさ=○ 重さ=○ 網羅性=◎ 深さ=○

世界の建築街並みガイド1 フランス/スペイン/ポルトガル

私の一番のおすすめです。建築に強いエクスナレッジ社からの発刊だけに、古典~現代建築まで、有名なものはもちろん、無名であっても名建築と思われるものまで、建築物の網羅性が半端ないです。一つ一つの情報量、特に写真はどうしても少なめになってしまいますが、持ち運ぶには十分。文章も「建築が好きな人が分かって書いているなあ」という感じがすごく伝わってきて、読んでいるだけでも楽しい。また、個々の建築の紹介以外に「コルビュジェの故郷を訪ねて」「集合住宅王国オランダ」のようなコラム充実しています。私の使い方としては、まず行きたいエリアの建築物をこのガイドブックで見渡して、その後にWebや下で紹介する詳しいガイドブックで情報を補強、そして旅行にはこの本を持っていくというスタイルが多いです。




2.建築案内 シリーズ
大きさ=△ 重さ=△ 網羅性=○ 深さ=◎

ヨーロッパ建築案内〈1〉

その存在感と写真や文章の充実度からご存知の方も多いと思います。1つの建築物に平均2ページさかれていて、写真もふんだん。さらには図面や、同じ建築家やコンセプトなどから関連する建築物も紹介されており、資料的にかなり使えるものとなっています。ここに書いてある予備知識をもってから観に行くと、何倍も楽しめること間違えなしです。一方でそのデカさと重さは、持ち歩くにはちょっと厳しい。装丁も窓穴が空いていたりとカッコイイのですが、何かに引っかかって破けることも多くて、取り回しは正直にしにくいです。また具体的な建物へのアクセスも不足しています。私は旅行には持って行きつつ、出歩くときにはホテルにおきっぱなしで別の軽いガイドブックを持っていくことが多かったですね。どうしても外で読みたい時には、該当ページを破って持ち歩くなんてこともしました。それもまたよしです。




3.Architecture & Design Guides シリーズ
大きさ=◎ 重さ=◎ 網羅性=○ 深さ=△

Berlin: Architecture & Design (Architecture & Design Guides)

CDジャケットサイズのコンパクトなエリアガイドブックです。かなりの数のエリア版がでており、その場所ごとの商業建築、住宅、美術館など代表的な建築を50~100点ほどピックアップしています。一冊1000円程度。知らないエリアについては、まずはとっかかりとしてこの本を見るのがよいと思います。ガイドブックとしてはもちろん、揃えて部屋に飾るだけで次の旅行どこにしようと夢が膨らみますね。





4.The Phaidon Atlas of Contemporary World Architecture
大きさ=○ 重さ=○ 網羅性=★ 深さ=△

The Phaidon Atlas of Contemporary World Architecture
The Phaidon Atlas of Contemporary World Architecture

同じような表紙の大型本を見たことがある方も多いと思いますが、『全世界』の名建築を集めた7.7 kg!のオリジナル版『Atlas』の縮小版(A5=地球の歩き方と同じサイズ)がこのガイドブックです。なんといっても全世界1052の建築物をプロフィールとともに網羅。所在地の情報や、建物内部や外面(またはその両方)を見学可能かどうかが載っているので、現地の地図と組み合わせれば、これ一冊でたどり着けます。

5.Architectural Guide Basel, 1980-2004
大きさ=○ 重さ=○ 網羅性=◎ 深さ=◎

Architectural Guide Basel, 1980-2004: A Guide Through The Trinational City
Architectural Guide Basel, 1980-2004: A Guide Through The Trinational City

ここから各エリア編です。まずはスイス・バーゼル編。旅行するには結構退屈という(すみません)スイスですが、建築を見に行くなら話は別。ヘルツォーク&ド・ムーロンはもちろん、以前東京オペラシティで展示会を開いたDiener&Dienerなんかの作品も多いです。本としてはエリアを絞っているだけあって、地図はかなり詳細で掲載数も108件。写真はモノクロです。バーゼルに行くなら必携です。

6.Vienna - New Architecture 1975-2005
大きさ=○ 重さ=○ 網羅性=◎ 深さ=◎

Vienna - New Architecture 1975-2005

つづいてウィーンの現代建築ガイドブックです。こちらはカラー写真も多く、さらに細かいエリアごとに建築が紹介されているため、持ち歩きながらウォークラリーのように使いやすい点が評価できます。詳細な行き方や地図、建物の中に入れるかどうかなども掲載。文化的な面のコラムも充実しています。

7.AIA Guide to New York City
大きさ=◎ 重さ=○ 網羅性=◎ 深さ=○

AIA Guide to New York City
AIA Guide to New York City

ニューヨークの建築物約5000件を網羅したペーパーバック。これを見ると、ニューヨークのほとんどの建築が何かしらの注目すべき歴史や特徴をもった建築であることがわかります。縦長の変形本ですが、これがなかなか手に馴染みますよ。

8.北欧案内―旅とデザイン
大きさ=◎ 重さ=○ 網羅性=○ 深さ=△

北欧案内―旅とデザイン

コペンハーゲン、ストックホルム、オスロ、ヘルシンキ。北欧4都市の、ショップ、レストラン&カフェ、ギャラリー、ブックストアなどデザインスポットの情報が広く浅く紹介されています。各店舗や博物館の地図もあり。URLも掲載されているため、ブックマークとしても使えます。

9.Barcelona: A Guide to Its Modern Architecture
大きさ=○ 重さ=○ 網羅性=◎ 深さ=◎

Barcelona: A Guide to Its Modern Architecture
Barcelona: A Guide to Its Modern Architecture

1860年から2001年までのバルセロナ建築を網羅したガイドブック。地図も詳細でかなり使えます。

10.フィンランド光の旅―北欧建築探訪
大きさ=○ 重さ=△ 網羅性=○ 深さ=◎

フィンランド光の旅―北欧建築探訪
フィンランド光の旅―北欧建築探訪

「カーモス」というのをご存知ですか?夜中でも日がありつづける「白夜」は有名ですが、カーモスはその逆の状態をさします。すなわち冬期に太陽が昇らない日があるのです。日本人とは光に対してまったく違った感覚をもっているのでしょう。建築においても、フィンランドでは光の扱い方にとても特徴があります。アアルトなどモダン建築の巨匠たちの作品だけでなく、古くからある木造教会(世界遺産)から、現代建築までを網羅。さらにはキャンドル、氷や雪のイベント、クリスマスなど、フィンランドならではの風物を物語のように紹介。もちろん、建物の所在や地図も充実しており、ガイドブックとしても有用です。


11.建築ガイドブック シリーズ
大きさ=◎ 重さ=◯ 網羅性=◎ 深さ=◎

建築ガイドブック アルヴァ・アアルト

建築家個人に光をあて、その前作品をガイドするシリーズ。ライト編では、現在一般公開されている建物のうちアメリカ合衆国内のほぼ全件と国外の4件を掲載。アアルト編でも、現存するほぼすべての建築作品について、それがつくられた背景や見所といった作品解説とともに、住所やアクセス手法を、地図を交えて紹介。ルネッサンス・バロック期の建築家アンドレア・パッラーディオ編もあります。




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次回は日本編です。