今年の建築旅行へぜひ持って行きたい、建築ガイドブックのガイド(国内編)




この記事は今年の建築旅行へぜひ持って行きたい、建築ガイドブックのガイド(海外編)の続きです。

前回に引き続きいま手に入る建築ガイドブックをレビュー。つづいて国内編です。国内建築ガイドブックの草分けといえば、1994年に発売された『建築MAP東京』です。建築を学問の対象ではなく、観光名所の一部でもなく、『建築作品めぐり』という独立した目的・カルチャーとして昇華させた初めての本でした。かくいう私も最初に買った建築ガイドブックは『建築MAP東京』です。これによって、建築の裾野も広がったと言えるでしょう。

海外編と同様、ガイドブックとしての使いやすさを「大きさ」「重さ」「網羅性」「深さ」の4つの尺度から独断した採点付きです。

1.建築MAP シリーズ
大きさ=△ 重さ=○ 網羅性=◎ 深さ=○


建築MAP東京

建築MAPシリーズの第一弾・東京編は建築書としては異例の11万部超のロングセラー。1980年以降1994年までに竣工した現代建築を中心に534作品を写真・建築データ・解説付きで紹介。1994年以降の建築を掲載した東京・2と合わせれば、東京の建築散歩は完璧。その後、横浜・鎌倉、大阪・神戸、京都なども発売されています。




2.建築MAP mini シリーズ
大きさ=◎ 重さ=◎ 網羅性=◎ 深さ=◯


建築MAP東京mini

建築MAPの持ち運びバージョンとして3分の2サイズの『mini』を発行。マップも解説もコラムも従来同様に掲載。縮尺のみ10,000分の1から15,000分の1へと変更。小さくて見にくい人向けにルーペがついていますが、使うのが面倒なので結局そのまま見ちゃいますね。日本を代表する建築家13名の東京圏の代表作を巡る建築家別作品ガイドも掲載されています。miniのほうが安いし取り回しも楽なのでおすすめです。



3.近代建築散歩 シリーズ
大きさ=◎ 重さ=◯ 網羅性=◯ 深さ=◎


近代建築散歩 東京・横浜編

どのように建築を巡っていくかという実際の散歩を再現しながら構成されているので、さながらナビゲーターのような役割を果たしてくれる珠玉の一冊。写真家が作者であるため、写真のクオリティも高い。東京・横浜編は、昔も今も変わらずお洒落な、銀座・築地コース。隅田川の橋を見に行く、江戸「橋」物語コース。街じゅうが建築の展覧会、横浜海岸通りコースなど、厳選した近代建築を訪ねる23の散歩道。大阪・京都編も厳選した近代建築を訪ねる17の散歩道。




4.昭和モダン建築巡礼 シリーズ
大きさ=◯ 重さ=◯ 網羅性=◯ 深さ=◎


昭和モダン建築巡礼 東日本編

「日経アーキテクチュア」の人気連載の書籍化。 私は当時WEB版から読んでいましたが、建築初心者にもわかりやすいウンチクたっぷりでかなり面白いです。東日本編・西日本編の2冊で、1945年から1970年のモダニズム後期の日本の建築に焦点を当て、日本を南から縦断、それぞれ28物件、28物件で、合計56物件+αを紹介。イラストも多く、また取り壊される建築に対する哀愁がものすごく漂ってきて、ちょっと泣きそうになるページもあります。



5.東京を歩こう!
大きさ=◎ 重さ=◎ 網羅性=◯ 深さ=◯


東京を歩こう! (エクスナレッジムック)
東京を歩こう! (エクスナレッジムック)

ちゃんと目的地までたどり着くことを重点に、駅からのルートや裏道などが詳しく解説されています。東京都以外からくる旅行者の方は、建築MAPよりもこちらのほうが取っ掛かりやすいかも。

6.東京建築ガイドマップ-明治大正昭和
大きさ=◎ 重さ=◎ 網羅性=◯ 深さ=◎


東京建築ガイドマップ−明治大正昭和
東京建築ガイドマップ−明治大正昭和

明治元(1968)年から1970年代末までに建てられた近現代建築を網羅的に扱った珍しい一冊。地図には900近くの物件をプロットし、指定・登録された文化財、建築賞受賞作品、DOCOMOMO Japan選定物件などはマークで示しています。また、半分の477物件については、写真と100字程度の解説付き。また、物件ごとのデータベースにとどまらず、東京全体を16エリアにわけて、その歩き方を解説していて、これが読み物としてとても面白い。時代時代の建築の有り様が、時間×場所という掛け算で理解できるようになってきます。


7.現代建築ガイドブック・千葉市
大きさ=◎ 重さ=◎ 網羅性=◎ 深さ=◯


現代建築ガイドブック・千葉市
現代建築ガイドブック・千葉市

千葉県の有名建築を網羅した唯一無二の一冊です。「千葉市優秀建築賞」の公式記録集として1988~2008年の受賞作134件を完全網羅。ガイドブックの専門家がつくっているわけではないので、地図などちょっと見にくい部分もありますが、自治体が主催する建築賞の作品をガイドブックとしてまとめ、さらに出版するというのはなかなか珍しい試みではないでしょうか。コンパクトなサイズで持ちやすく、見開き2ページごとにひとつの建物が掲載されている部分は◯。


海外編も紹介していますので、今年の建築旅行へぜひ持って行きたい、建築ガイドブックのガイド(海外編)も合わせてどうぞ。

このガイドブックもいいよ!というのがあったらぜひコメントください。
次回は旅行ガイドの真打?iphoneアプリ編です。